長野県下伊那郡下條村に本社を構える南山興業は、コンクリート用骨材としてインフラ工事に必要不可欠な砂や砂利の採取と販売を行っている会社である。事業のさらなる拡大を実現させるため、今年初めに県内トップ企業とのM&Aを実現させた。豪雨災害による資産の損失というピンチを乗り越えた両社の歩みをレポートする。

南山興業本社のすぐ横を流れる天竜川には、採取用の特殊船が常時係留されている。ポンプで川底の砂利を吸い上げ、川辺に設置した砂利プラントで洗浄選別後、土木工事会社等に販売している。
生産量は年間約3万立方メートル。同社が販売する砂利は比重が軽く、災害復旧工事やトンネル工事、擁壁工事等で採用される吹き付け用のコンクリート骨材として高く評価されているという。
事業環境は良好で、飯田市に新駅の建設が予定されているリニア中央新幹線工事や、長野県飯田市の中央自動車道を起点として静岡県浜松市浜名区引佐町に至る延長約100キロメートルの高規格幹線道路「三遠南信自動車道」の工事による需要拡大にともない、近年順調に業績を伸ばしてきた。
まさにこれから飛躍の時を迎える時期にM&Aによる会社売却を検討したのは野竹秀範前社長(60)である。まずはその理由を聞こう。
「リニア特需だけでなく、長野県飯田市から静岡県浜松市を結ぶ三遠南信自動車道についても、長野県側の工事はもうすぐ終わりますが、次に静岡県側が始まります。こちらも長期にわたる大型インフラ工事のため、大量のコンクリート骨材が必要になり、当社の業績も中期的には安定するでしょう。しかし一方で、拡大する需要に対する供給責任を負えるのかということも真剣に考えるようになりました。資源は豊富にありますが、生産量増加にはさらなる設備投資が必要です。しかし私自身60歳を迎え、数年前に体調を崩して入院したこともあり、さらなる事業拡大に乗り出すだけの知力、体力、胆力に限界を感じるようになりました。従業員3名ともまだ働き盛りの年代で、経営者個人の事情に左右されることなく安心して長く働ける環境を作るのは私自身の責任です。そして、事業を成長発展させ供給責任を果たし、かつ従業員の雇用維持と改善を図るためには、より資本力のある会社に経営してもらう方がよいと考えたのです。そこでインターネットで探したM&A仲介会社に相談をしてみました」

その結果同社には高い関心が寄せられ、相談から間髪入れずに譲り受け側候補の企業を次々と紹介してきた仲介会社もあった。「こんなに関心を持ってくれるんだ」とうれしい半面、思いのほか多くの提案を受けた野竹氏はかえって困惑したという。候補先企業をどうやって選べばよいかわからなかったうえ、特需期間のみならず長期的に南山興業の成長にコミットする意思のある企業があるかどうか不明だったからである。
仲介会社の営業社員と情報交換し、読み切れないほどのメールが送られてきたものの、具体的に企業経営者と面談するまでには至らないまま、いたずらに時間は流れた。1年が過ぎ、不安が募る一方となった野竹氏は、これまでの経緯を、税理士法人mkパートナーズの伊藤重典巡回監査士に相談してみた。するとTKCと業務提携しているTBCを紹介されたのである。譲り渡し側企業に寄り添って伴走支援する同社の手法に野竹氏は安心感を抱いた。こうして同社は2021年3月、TBCとFA(ファイナンシャルアドバイザリー)契約を締結し、候補先企業との交渉窓口をTBCに一本化することに決めた。

その後同社は、TBCを窓口として連携するM&A支援業者や地元金融機関、事業承継・引継ぎ支援センター、マッチングサイト等を通じて同社に興味を持つ複数の企業とトップ面談を行ったが、相思相愛となりそうな会社は現れなかった。野竹氏が候補先企業像として描いていたのはこうである。
「高い専門知識が必要な仕事ですので、将来を任せるのであれば同業者である『生粋の砂利屋さん』が理想だと考えていました。また①公的機関への許認可申請も多く、組合員としての活動実績も重ねてきたことから、M&A実施後も地域や同業他社との協調関係を維持できる②従業員の雇用維持と待遇改善を実現してくれる③後継経営者を出してもらえる④設備投資への積極的な姿勢などを重要なポイントとして見ていました」
譲り受け側候補企業との交渉を始めて約半年後、ついに大本命となる企業があらわれる。県内で8カ所の骨材工場を構える建設資材事業、観光事業、ガソリンスタンド事業などを展開する塩沢産業である。野竹氏は同社の山口英俊社長から並々ならぬ熱意を感じた。
「砂利や砂などの骨材は、建設工事には不可欠であるコンクリートの材料です。骨材がなければ建設工事も進みません。しかし、骨材の価格は建設会社主導で決められることが多いため、採算が合わずに消えていく『生粋の砂利屋さん』もありました。このような状況を打破するため、M&Aを積極的に行って事業を拡大し、骨材産業そのものの地位向上を実現したいという熱意を山口社長から感じたのです。候補先企業のイメージとぴったり合ったことだけでなく、業界の将来を切り拓こうとしているその姿勢に深く感銘を受けました」
最初の面談で両社トップは、骨材業界の地位向上が必要不可欠であるという思いを共有し意気投合した。そして両社は同年3月31日、基本合意書を締結する。株式譲渡価格、買収監査(デューデリジェンス)を6月に行うこと、株式譲渡契約を7月に行うこと、同月までに他の会社とM&Aの交渉を行わないことなどが盛り込まれた。

相思相愛でとんとん拍子に進むかにみえたM&Aだが、天災によって一転暗雲が立ち込める。同年6月1日、梅雨前線が活発化し県内で集中豪雨が発生、上流から大量に流されてきた木材によって砂利採取船が流されてしまったのだ。
「心臓部ともいえる採取船がやられてしまったので、正直M&A自体難しくなったと思いました。スケジュールはいったんキャンセルになりましたが、その後山口社長からは、M&Aの意思は変わらない、という言葉どころか、『一緒にこの難局を乗り切りましょう。できることがあれば何でも手助けをしますよ』というありがたい言葉をいただきました」(野竹氏)
流された砂利採取船の撤去作業や復旧費用、代わりとなる中古砂利採取船導入の見積もり等に時間がかかり、M&Aの交渉が再開したのは8月の末だった。9月4日、野竹氏は山口社長宛に「中古砂利採取船の導入に関するご報告とご提案」と題する文書を送付した。被災前の状態に復旧するための費用をまとめた資料とともに、ある提案をするためである。
「当初から、山口社長が生産量増大に向けた設備投資を構想していることをお聞きしていました。そこで私は、あわてて被災前の状態に復旧させるのではなく、当面は組合の共同採取の原石を仕入れて生産を継続し、M&Aの契約締結後に大型採取船を導入していただけるよう提案したのです。もちろん資産が消失し撤去費用などもかかっているので、当初想定していた譲渡価格からその分の費用を差し引いたうえで引き継いでいただくこともお伝えしました」

野竹氏の提案を山口社長は快諾。再びM&Aの交渉が大きく前進した。譲り受け側企業主導による労務、財務・税務、法務に関して矢継ぎ早に買収監査が行われたが、TBCとTKCそして税理士法人mkパートナーズの強力なバックアップによって不安を感じることはなかったという。
「必要な資料や書類の準備、質疑応答などすべてTBCから支援してもらえ本当に心強かったです。税務や財務についても、月次巡回監査を通じて伊藤さんにしっかり内容をみていただいていたので不安はありませんでした」
約1カ月かけた買収監査の結果を受け、契約前に整理すべき事項に対応。就業規則の改定や不動産賃貸契約の整理などを行い、年が明けた1月11日、両社は株式譲渡契約書を締結した。翌12日、南山興業の全株式が塩沢産業に譲渡され、南山興業は塩沢産業の子会社となった。同時に、塩沢産業の副社長である片井周一氏が南山興業の新社長に就任。野竹氏は今年末まで取締役として在籍し、新体制への移行のための引き継ぎを行う。
「南山興業は、これから塩沢産業グループの一員としてさらなる成長発展を目指します。川砂利採取の再開に向けた設備投資も必要です。そのために、まずは従業員や取引先、組合関係者など、これまで当社が築いてきたものをスムーズに引き継いでもらう必要があります。片井新社長のもとで私も最大限協力し、南山興業の新たな門出を見届けるつもりです」
こうした野竹取締役の言葉には、理想の相手とM&Aが実現した一種の安堵感とともに、新たなスタートへの期待感がうかがえた。塩沢産業と南山興業の挑戦が始まる。
戦略経営者2024年3月号より
■ 会社概要
| 業種 | 砂利採取業 |
|---|---|
| 設立 | 1970年6月 |
| 所在地 | 長野県伊那郡下條村睦沢10170番地 |
| 売上高 | 約2億円 |
| 従業員数 | 3名 |
| 会計システム | FX2 |
■ 当時の監査担当者
監査部 巡回監査士 伊藤重典
当事務所では、社長が高齢で後継者が決まっていない会社に対しては、「事業承継のことはお考えですか」と積極的にお声がけするようにしています。事業承継について考えていない経営者はいないと思いますが、どうしても日々の仕事に追われて、なかなか真剣に検討することができないのが実情だと思います。会計事務所が事業承継について本格的に検討するきっかけとなれるよう意識しています。
南山興業さまについては、まだ社長が引退するような年齢ではありませんでしたが、決まった後継者がいないことは分かっていましたので、気にするようにはしていました。M&Aについては、私自身が知見も経験も無かったため不安でした。TKCでM&Aを相談できる部署(中小企業事業承継支援部)とTBCの存在は大きかったです。実際、私はTBCから依頼された資料を提出するぐらいで、大きな業務負担にもならず、安心できました。
長野県伊那市に本社を構える利久電器は、固定抵抗器のメーカーとして60年以上の業歴を持つ。果敢な事業買収策から債務超過に陥るも、松㟢堅太朗顧問税理士の支援のもと経営計画策定に着手。経営改善策を地道に施し、業績のV字回復を果たした。伊藤昭一郎社長を中心に、その変貌のプロセスを聞いた。

固定抵抗器とはどのような機能を持つ部品ですか。
伊藤:電気を回路に流す際の電流量を調節する部品です。機械装置や家電など、電気回路が搭載される製品には必ずといっていいほど使用されています。
創業は1960年とか。
伊藤:先代社長である父が会社を興して間もないころは、時計の組み立てをなりわいとしていたようです。伊那地域には数多くの抵抗器メーカーがあり、当社も抵抗器生産に徐々にシフトしていきました。現在は固定抵抗器および構成部品の開発、販売を主力にしています。
2004年に経営を引き継がれたそうですね。
伊藤:大学卒業後、伊那市内の機械部品メーカーに就職し、営業職に従事していました。いわゆる、でっち奉公ですね。幼いころから、将来は会社を継ぐよう父から言われて育ったので、いずれ社長を任される時が来るだろうという腹積もりはありました。社長就任時に決意したのは、永続する会社にすること。そのための仕組みをつくるのが私の役割にほかなりません。
社長に就任され、どのような経営体制をしかれましたか。
伊藤:常務の牧田とともに経営をかじ取りしており、私はおもに事業の方向性や経営方針の立案を、牧田は経営計画策定や財務管理を担当しています。牧田とはいとこ同士の間柄ですから、事あるごとに気兼ねなく相談しています。

現在目指されている方向性を教えてください。
伊藤:今日まで、ほかの会社があまり本腰を入れていない領域の業務を積極的に請け負ってきました。多くの同業メーカーが海外に製造拠点を移転し、固定抵抗器の国内生産量は年々減少していました。そんななか伊那地域の同業メーカーと議論を交わし活路を見いだしたのが、緩やかな連携体制の構築です。複数社がタッグを組めば、抵抗器の製造案件をお互いに融通できるし、材料を仕入れる際もコストを抑えられる。いわば黒子となり、長年培ってきた技術を生かせる分野に特化していこうと考えたわけです。
足元の業況はいかがでしょう。
牧田:コロナ禍で電子部品の調達難がいわれていましたが、取引先さまから予想を上回る先行注文がありました。そのため売り上げ、利益とも落ち込むことはなかったです。当社は従来原材料価格の変動に応じて、適切なタイミングで販売価格の見直しを図ってきました。近年の原材料価格の高騰は世界的な潮流であり、価格交渉しやすい面もあります。
商品の値決めはどのようにされていますか。
伊藤:『FX2』(戦略財務情報システム)の《変動損益計算書》を参照して限界利益を確認するのはもちろん、仕入れ価格上昇分を織り込んで工賃を積み上げ、利益が確実に見込める価格を算出しています。
現在の拠点数は?
伊藤:長野県内に3カ所、新潟県内に1カ所工場があるほか、東京に営業所を構えています。このうち2カ所の工場は、もともと他社が固定抵抗器を生産していた拠点です。

松﨑顧問税理士と10年以上のお付き合いをされていると聞きました。
伊藤:松﨑先生の事務所と顧問契約を結んだのは2011年です。当時、他社の抵抗器部門の事業を引き継ぎ、製造技術と機械設備を積極的に取り込んでいました。ただ、経理体制はどんぶり勘定で、従来の顧問税理士に財務面を丸投げしているような状態。あまりにも急ピッチで事業を引き継いだため、借入金が増え採算が徐々に合わなくなっていました。そうした状況を見かねた当時のメインバンクから紹介されたのが松﨑先生でした。
牧田:金融機関に返済猶予を申し込んだところ、経営計画の提出を求められました。しかし、経営計画などつくったことがなかったので、何から着手すればよいか見当がつかなかったんです。松﨑先生と監査担当の永井さんに、計画策定をいちから支援してもらいました。
どのような流れで計画を策定しましたか。
永井:まず、利久電器さまの経営状況を把握するべくさまざまな質問を投げかけ、どんな点に課題を感じ、どう改善されたいのかを引き出すことに努めました。5年後に目指されている姿を思い描いていただき、『継続MASシステム』を活用して売り上げや限界利益といった数値目標とのかい離を埋めるための施策を検討してもらったのです。お二方とのやり取りを経て課題として挙がったのが、人件費をはじめとする経費の圧縮でした。
伊藤:経営を立て直すには、何より正確な業績をつかむ必要があります。『FX2』の部門別業績管理機能により工場ごとの損益状況を把握し、課題点に対する打ち手を計画に盛り込みました。
打ち手の内容は?
伊藤:同業他社でも生産可能な汎用品をつくるのをやめ、近隣のメーカーに製造をアウトソースするなどして、商品構成を見直しました。あわせて、費用を変動費と固定費に分ける「変動損益計算書」の考え方に基づき、固定費が限界利益を上回らないよう、工場別の経費圧縮策も検討しました。汎用品の製造に携わっていた従業員に退職してもらうなどつらい決断もありましたが、経営計画策定と『FX2』の活用をとおして、部門別の業績を視覚化できたのは大きかったです。
松﨑:伊藤社長と牧田常務は経営計画に基づき、商品構成や販売価格の見直しなど地道な対策を施されてきました。業績の近年の推移を見るとその成果が如実に表れており、経営改善からすでに一歩進んだステージに移行されています。

松﨑先生と永井さんの支援のもと、経営計画を策定されてみて、どんな点が変わりましたか。
伊藤:業績の見方と考え方がガラッと変わりました。以前は取引先さまのニーズに着実に応えていけば、最終的に帳尻が合うと考えていたんです。でも世の中はそれほど甘くなかった。経営計画を策定するようになってから、売り上げや利益目標に対する進捗と、資金残高が明確になり、タイムリーに打ち手を施せるようになりました。
また、新たなアイデアを思いついたとき、松﨑先生と永井さん、牧田の顔が真っ先に思い浮かぶようになりました(笑)。毎期立案している販売計画については毎月2回、進捗状況を幹部社員にメールで通知し、共有しています。
業績検討会を定期的に開催されているそうですね。
伊藤:四半期ごとに開催している業績検討会は、経営計画に記した行動計画の効果を検証する場です。私が業績の見通しを説明しており、決算報告会には取引金融機関の方も招いています。
本島:利久電器さまは「モニタリング情報サービス」(P69参照)を活用され、月次試算表データをわれわれに毎月送信されています。前年から大幅に増減した項目がある際など、踏み込んだ質問ができ助かっています。TKCの財務会計システムは、基本的には月次決算後遡及訂正できない仕組みになっているので、会計データに対する信頼感が違います。
将来についての展望をお聞かせください。
伊藤:時代の変化を読み取り適切な打ち手を施し、当社を永続させるのが私の使命です。そのためにも保有するコア技術を大切にしながら、抵抗器業界における存在価値をさらに高めていきます。
(取材協力・税理士法人mkパートナーズ/本誌・小林淳一)
※継続MASシステム…経営者のビジョンに基づいた「中期経営計画」と、次年度の業績管理のため の「単年度予算」、「短期経営計画」の策定を支援するシステム。計画と実績の検証を継続的に実施し、間題点の発見・対策を検討する「業績検討会」や「戦略的決算対策検討会」の開催を支援する。


戦略経営者2023年11月号より
■ 会社概要
| 業種 | 電子部品製造業 |
|---|---|
| 創業 | 1960年12月 |
| 所在地 | 長野県伊那市上新田2595 |
| 売上高 | 6億3000万円(2023年4月期) |
| 従業員数 | 19名 |
長野県上伊那郡宮田村に工場を構える北川製菓は、その商品開発力と営業力で全国に得意先を持つ製菓メーカーだ。同社にとって経営者保証の解除は、スムーズな事業承継だけでなく“将来的な飛躍”へのステップという意味合いが強い。

2018年、米田幸彦副社長が「長野県プロフェッショナル人材戦略拠点」という制度を利用して北川製菓に入社した時、お世辞にも同社の財務状況はかんばしいとは言えなかった。度重なる設備投資によって借入金がかさみ、自己資本比率が低迷。バランスシートが毀(き)損(そん)しかけていたのだ。加えて、懸案となっていたのが後継者問題。同社の北川浩一社長は、懐刀の守谷光司副社長への第三者承継を希望していたが、ネックとなっていたのが「経営者保証」だった。そのため、入社早々の米田副社長は「経営者保証解除が、私に課せられた仕事」と考えるようになる。
長野県上伊那郡宮田村に工場を構える北川製菓の創業は1958年。北川社長の父である先代が隣の駒ヶ根市で飴(あめ)の製造を試みたのが始まりである。北川家のそもそもの家業は「お菓子屋さん」。その経験から「みようみまね」(北川社長)で煎餅(せんべい)、そして当時はまだ珍しかったドーナツの製造を手掛けるようになる。そのドーナツの製造が、同社のターニングポイントとなった。北川社長は言う。
「〝カステラドーナツ〟という名前をつけて販売しました。いわゆるベビードーナツですね。珍しさも相まってこれが受けたのですが、加えて父が偉かったのは、いろいろと研究しながら機械化・量産化を行ったことです」
その生産力を武器に営業活動にも力を入れた。複数の地元の製菓移出問屋にわたりをつけて県内外での販売を加速。さらに名古屋や大阪の地方移出問屋とも取引を成立させて全国展開に拍車をかけた。
こうした順調な成長のベースにあったのは、やはり北川製菓の商品力だ。
「常に新たな商品開発を実践しつつ、安全性にも気を配りました。乾燥剤などは使わず、卵は産地の特定できるものを厳選して徹底した衛生管理、温度管理のもとに使用。ドーナツの製造過程で使用される揚げ油は、一部上場の食用油メーカーと共同開発したオリジナルのものです」(北川社長)
1980年代には「ドーナツファミリー」、そして新鮮な牛乳と卵だけで仕上げた「信州牧場のドーナツ」を発売すると、これが瞬く間に大人気シリーズとなった。
こうした取り組みが評価され、90年代にはコープ北陸、コープ長野との取引もスタート。大袋にどさっと入っている従来のものとは違い、箱に20個がひとつひとつパッキングして収めたドーナツがヒット商品となる。気密性や上品さが付加価値となって消費者の支持を得たのである。さらに、出色だったのが2015年、駒ケ岳第2工場を建設した際に生産を開始した「冷凍ドーナツ」の開発である。瞬間冷凍するので劣化しにくく賞味期限が長い上、「味も良い」(北川社長)という。そのまま食べても常温に戻して食べてもいいし、レンジでチンすれば揚げ立ての味が楽しめる。一時は大手コンビニとのコラボレーションも取りざたされたほど、業界の評価も高い。
「実はこの冷凍ドーナツには今のところ競合がありません。オンリーワンなので、将来的には世界に売っていける商品だと思っています」(北川社長)
ちなみに、この冷凍ドーナツ。ここ数年で一気に全販売額の2割程度を占めるようになる、同社成長の立役者となっている。


さて、こうした斬新な取り組みを続けてきた同社の「宿命」は、当然ながら設備投資である。1959年にドーナツの製造を開始して以来、65年にドーナツ製造ラインを新設。74年には駒ヶ根に工場、85年にあんドーナツや「ファミリードーナツ」、打ち菓子などをまとめて生産できる新工場を竣工(しゆんこう)。さらに既述した通り、2007年に駒ヶ岳第1工場を建設してHACCPシステムを導入。15年には、駒ケ岳第2工場を新設して、冷凍ドーナツの生産に乗り出した。この間、製造ラインの増設なども頻繁に繰り返したため、投資金額はかさんでいった。
そこに降りかかったのが、後継者問題である。北川社長は言う。
「副社長であり営業面を任せていた守谷が、〝社長をお受けすることは可能ですが、個人保証はできません〟というわけです。当然ですよね。経営者保証の解除は時代の流れでもあると思っていたので、これを何とかできないかと……」
こうした北川社長の意向を受けて動いたのが、冒頭の米田副社長だった。米田氏は言う。
「そもそも、当時の当社の財務状況では経営者保証の解除は難しいのではと感じていました。そこで、北川社長はもちろん守谷副社長や税務顧問である松﨑堅太朗税理士・公認会計士の支援も受けながら経営改善に取り組みました」
松﨑税理士・公認会計士は、この時の経営改善を「売上高重視から限界利益、付加価値重視の経営への転換」と表現する。
具体的にはまず、売上高至上主義から増大していた大手への廉価での取引をひとつひとつ見直し、利益率のよいルートを探し求め、転換していった。また、守谷副社長の音頭のもと、営業の人員を刷新しながら冷凍ドーナツを目玉商材としつつ「冷凍食品ルート」を開拓していく。さらに、借入金の形態にもメスを入れた。
松﨑税理士・公認会計士は言う。
「メインバンクのアルプス中央信用金庫の当座貸越は枠を使い切っていたので、遊休資産を処分して手元資金を厚くし、借り入れも短期と長期のバランスを見直した方がいいのではと進言しました」
これら取り組みが功を奏し財務内容はみるみる改善していく。これをどう経営者保証解除に結びつけていくかだ。
米田副社長が次の手として支援を依頼したのが、長野県事業承継・引継ぎ支援センター所属の「経営者保証コーディネーター」だった。経営者保証コーディネーターとは、経営者保証ガイドライン(P18参照)の充足状況をチェックリストなどから確認し、解除に向けた状況整理を行う国の専門家。その経営者保証コーディネーターから「解除に障害なしとのお墨付きをいただいた」(米田副社長)ことで、先行きが見えてきた。
松﨑税理士・公認会計士も「経営者保証コーディネーターは意外と知られていませんが、今回、経験豊富なこの方の存在が〝効いた〟と思います」という。


あとは個別の金融機関との交渉になる。当然、ターゲットはメインバンクのアルプス中央信用金庫である。米田副社長は、同金庫福岡支店の上原守支店長に事情を説明し、経営者保証の解除を依頼した。
「当金庫としては、北川社長が守谷副社長へ事業承継を考えておられること、そしてそのためには経営者保証がネックであること、を確認させていただき、どうお手伝いできるかを行内で何度も真剣に議論しました」と上原支店長。
同金庫融資部の加納宏幸審査課長が付け加える。
「ガイドラインの要件のひとつである『財務基盤の強化』、つまり①業績が堅調で必要なキャッシュフローが確保できている②業績の下振れリスクを考慮しても償還能力が高い……を北川製菓さまが満たしていることなど総合的に評価させていただくことで、〝解除への道筋〟が見えてきたように思います。そこには、北川製菓さまのディスクロージャーの姿勢、あるいは北川社長を中心に守谷、米田両副社長が脇を固め、さらには会計面では松﨑先生がアドバイザーとして存在されている〝社内体制〟への信頼もありました」
北川製菓では、米田副社長と松﨑税理士・公認会計士を中心に、会計のシステム化を進めており、TKCモニタリング情報サービス(MIS=P13参照)の採用によって月次試算表のデータを毎月、アルプス中央信金など取引金融機関に送っている。「(経営者保証解除には)情報開示が大前提。判断材料がなければ動けませんから。その意味ではMISはとてもありがたいですね」と加納審査課長。
こうして2022年末、経営者保証は外されたわけだが、実はここまでの一連の動きは、それだけが目的ではない。上原支店長は言う。
「最終的な目的は、北川製菓さまがリファイナンスを含めたわれわれの支援で手元資金を潤沢にし、さらなる成長を実現していただくことです」
財務体質を改善しつつ事業承継を成功させることで、飛躍へのステップをつくることが北川製菓の企業としての目標である。そのプロセスのなかで「経営者保証の解除」は必然だったということだ。
実際、北川製菓では第3工場の建設を視野に入れた業容の拡大が、具体性を帯びてきている。


戦略経営者2023年3月号より
■ 会社概要
| 業種 | 製菓製造業 |
|---|---|
| 創業 | 1958年7月 |
| 所在地 | 長野県駒ケ根市赤穂14-329(本社) 長野県上伊那郡宮田村1934-5(駒ケ岳工場) |
| 売上高 | 約24億円 |
| 従業員数 | 130名 |
長野県南部の伊那市に本社を構える守屋建設は、70年をこえる業歴をもつ老舗の建設会社。地元の公共工事が主力事業である。3代目の守屋清志社長は松﨑堅太朗顧問税理士の支援のもと、経営改善に着手。『DAIC2』を活用した工事案件ごとの利益管理を徹底し、黒字を生む体質へ転換をとげた。経営に「第三者の眼」を率先して活用する守屋社長の取り組みをレポートする。

「誰かに自社の業績を見られるのは大事ですね。さまざまな意見をいただけて勉強になります」
守屋清志社長はこう語る。半年に一度、地元金融機関へおもむき、業績報告を行うのが習慣になっている。いわゆる「バンクミーティング」に出席しているのは、取引金融機関2行と長野県信用保証協会の担当者、そして税理士法人mkパートナーズの松﨑堅太朗顧問税理士、小(こ)田(た)切(ぎり)丈監査担当という顔ぶれ。
もっとも、参加者が守屋建設の業績データを確認するのは、この場が初めてではない。同社は「TKCモニタリング情報サービス」(MIS)を活用し、月次決算データを金融機関および信用保証協会に送信しているためだ。
「バンクミーティングでは直近の業績を改めて報告するとともに、TKCの自計化システム『DAIC2』から出力した完成工事一覧表などの資料を配布し、工事ごとの進(しんちよく)捗(しんちよく)状況も説明しています。MISの活用により、会計処理等について出席者からあらかじめ質問を受けた上で打ち合わせに臨めるので、討議内容が濃くなってきていると感じます」(守屋社長)
開催当初は1時間以上におよぶケースもざらだったが、最近は30分ほどで終了する回もある。とはいえ出席者からの鋭い質問も予想されるだけに、こうした場を率先して設ける経営者は限られるのではないか。松﨑税理士の話。
「確かに耳の痛くなるような指摘を受ける機会も多くあります。そこで反発し、バンクミーティングの開催をやめてしまう経営者は少なくありません。そんななか守屋社長はバンクミーティングのメリットに目を向け、ご自身の意思で続けられています」
アナの中まで楽しさを探す会社です──。
同社のウェブサイトを開くとユニークなアニメーションとともに、こんな文字が目に飛び込んでくる。 ウェブサイトは2020年1月にリニューアルしたばかり。守屋社長みずからホームページ作成ツールを用いて制作した。「仕事を楽しく行うのが当社のモットー。なにもふざけて仕事するということではなく、自信とやりがいを持って打ち込むという意味合いです」と真意を話す。道路、橋梁(きようりよう)建設から下水管工事まで、公共工事を幅広く手がける同社。最新鋭の機器への投資にも意欲的で、6月にはレーザースキャナーを導入した。
この装置で測量したデータを専用ソフトに読み込むと、工事現場での対象物までの距離や面積などを自動で計算できる。測量業務を外注する建設会社が多いなか内製化し、コスト削減や社員教育を図るねらいがある。
「レーザースキャナーを利用し、測量にまつわる作業効率が一挙に高まりました。社員も興味を持って操作方法の習得にのぞんでおり、仕事の楽しさに結びついていると感じています」(守屋社長)
政府による「国土強(きようじん)靭(きようじん)化計画」の推進や、リニア中央新幹線開通に向けた建設工事により、受注件数は近年増加傾向にある。建設工事業は新型コロナの影響が比較的軽微な、数少ない業界のひとつといえるだろう。インフラの老朽化に加え、相次ぐ自然災害から、公共事業の重要性が認識されつつあるが、2000年代初頭は逆風のただ中にあった。田中康夫長野県知事(当時)のもと公共事業費が削減され、県内の建設事業者に対して批判の矛先が向けられていたのだ。守屋社長は振りかえる。
「現場で発生する費用や利益は念頭になく、なんとなくもうかっていればいいという感覚でした。なにしろ工事を半値で請け負っていた時期もあったほどです。県内の建設業界全体がある種、ぬるま湯体質に陥っていたのは、確かといえるかもしれません」


田中氏が退任した後も苦境はつづく。民主党政権が公共投資の見直しをすすめ、減少した公共事業のパイをめぐり、同業者が受注を争う格好になった。そして11年5月、守屋氏は3代目の社長に就任する。震災からまもない時期での登板となり、「この状況は敗戦処理投手ではと思いました」と守屋社長。いわばどんぶり体質だった同社の経営を立て直すべく、手を差し伸べたのが前出の松﨑税理士だった。
松﨑税理士と税務顧問契約を結んだのは15年にさかのぼる。地元金融機関からの紹介がきっかけだった。松﨑氏は守屋建設の経営改善支援に早速着手する。活用したのが、業績の悪化している中小企業を対象とした認定支援機関による「経営改善計画策定支援」のスキーム。認定支援機関の支援を受けて、事業者が経営改善計画を策定した場合、策定支援に要する費用の一部を政府が補助する事業である。同社は15年7月期、赤字に陥っていた。松﨑税理士は当時の財務状況をこう話す。
「複数の手形借り入れが行われていて、どの工事で発生する費用を手当てするための資金であるのか、関連性が不明確なものが多数ありました。また、正常運転資金の範囲を超えた借り入れもあり、返済するための資金をまた借り入れる、といった例も散見されました」
経営改善計画におけるアクションプランの柱として、『DAIC2』の活用による現場別採算管理の徹底を盛り込んだ。税理士法人mkパートナーズで最も多くの企業に『DAIC2』立ち上げを指導してきた小田切氏が計画策定を支援した。
「守屋社長と話し合いを重ね、借入金の返済予定も念頭に置きつつ目標売り上げを設定し、5カ年の行動計画をつくりました。利用開始当初は利益額の少ない工事も含まれていましたが、『DAIC2』による管理を徹底して、現在受注されているほぼすべての工事は黒字をしっかり計上できるようになっています」(小田切氏)
同社では、工事で発生する概算費用を計算する原価管理ソフトをもともと利用していた。「社員一人ひとりが責任感を持って業務に取り組めるようにする」(守屋社長)ため、各社員のパソコンにインストールされている。


『DAIC2』導入による相乗効果は大きかった。
「面白いことに、現場担当者が原価管理ソフトで計算した数字と『DAIC2』で管理している数字が一致しているか、確認するようになったんです。巡回監査時に小田切さんに出力してもらっている工事利益管理表と照合しても、数字が一致するようになりました。現場ごとの利益額を比べられるようになり、刺激を与えあう環境が生まれてきた。社員の数字に対する意識は高いです」(守屋社長)
経営改善計画策定支援事業のステップとして定められているのが、金融機関担当者の同席する業績検討会、すなわちバンクミーティングの開催である。経営者自身が金融機関を半期ごとに訪問し、業績報告を行うことが求められる。
同支援事業において規定されている期間は3年間だが、守屋社長は4年目以降も自主的に開催を継続している。「金融機関も資金を融資しているので真剣です。その場でアドバイスされる事柄は有益な内容で、実質的に無料で受けられるコンサルティングといっても過言ではありません」と松﨑税理士。現場1件ごとの採算管理の徹底、行動計画の着実な実行を通し、16年7月期には早くも黒字に転換した。
田中県政のころ、40名を上回る社員が在籍していた同社。現在は13名の社員で当時と引けを取らない工事額を受注し、さらに黒字を確保している。これらのデータは、体質改善を示す何よりの証左だろう。「わた1トンではなく、鉄1トンの会社にしたい」と言い表す守屋社長。外見は小さくても、中身の詰まっている会社にするのが目標だ。

戦略経営者2021年1月号より
■ 会社概要
| 業種 | 建設業 |
|---|---|
| 創業 | 1945年4月 |
| 所在地 | 長野県伊那市中央5184番地 |
| 売上高 | 5億9000万円(2020年7月期) |
| 従業員数 | 13名 |
長野県駒ヶ根市を地盤に住宅事業を展開するのが小林工業所だ。健康住宅づくりをウリにして、着実に業績を伸ばしてきている。そこで、TKCの『DAIC2』を活用した財務戦略を、同社副社長の小林啓一氏(45)と顧問税理士の松崎堅太朗氏、同税理士事務所監査部長の下島哲朗氏に聞いた。
御社は来年1月に創業90周年を迎えるそうですね。
小林:はい。初代(祖父)が大工の棟梁になって、建築事業を始めてから、来年1月1日でちょうど90年になります。これまでは主に公共工事と民間工事の2本立てでやってきましたが、3、4年前から住宅に特化してきています。以前は年商の7割ほどを公共工事(体育館・博物館などの建築工事、河川・道路の土木工事)が占めていましたが、現在は逆に、民間の住宅工事が全体の約98%を占めています。 公共工事から住宅事業に軸足を移した理由は、1つは民間の方が次期の経営計画を立てやすいからです。公共工事は年度によって変動がありますし、一般競争入札では利益を出すのが難しいところがあります。今一つの理由は、私自身(一級建築士として)住宅関連の設計を得意にしているからです。大学を卒業後、長野市内にある建築設計事務所で6年半修業したあと、当社に入社しました。住宅はもとより病院、美術館などの設計にも関わり、“建築ノウハウ”を身につけてきました。
年間の請負件数は……。
小林:主力の一般住宅の他に、店舗併用型住宅、事務所なども手がけており、年間の請負件数は新規が20数棟、リフォームが百数十棟です。店舗併用型というのは、例えば1階が美容室で、2階が住宅といったケースです。駒ヶ根市にある「本社」から車で1時間以内で行ける範囲を主要営業エリアと定めており、2007年5月期の売上高は約5億円でした。当社のウリの一つは、自然素材にこだわった健康住宅づくりです。シックハウス症候群の主原因といわれる「化学ノリ」を一切使わず、代わりに米で作る「米糊」や「にかわ」を用い、建材自体も天然素材をふんだんに使って快適な住環境を作り出しています。
松崎堅太朗公認会計士・税理士:実は、昨年新築したうちの事務所も、小林工業所さんに建ててもらったものなんですよ。おしゃれでアートな感覚がとても気に入っています。
マイホームは一生に一度の買い物だけに、契約にこぎ着けるまでが大変なのではないですか。
小林:通常、お客様との打ち合わせは半年~2年くらいかかり、建物を着工してから完成させるまでの工期は最短で4ヵ月、長くて9ヵ月です。当社の人員は設計担当が私を含め7名、工務担当(現場監督)が4名など全部で17名です。
まず、口コミなどで仕事の依頼がくると、私の方で「担当設計士」を決め、その設計士がお客様の土地の状況(周辺環境)を調べたり、予算や間取りなどをヒアリングしたりして設計図に仕上げます。ここまでくるのに半年以上かかり、「資金計画」も担当設計士が作成します。
ところで、住宅事業に特化しようと考えたとき、従来の住宅事業課を「ファミリーウッド」(登録商標)という名称に改めました。小林工業所という名前では、住宅をメーンにしている会社とは思われにくいからです。そこで、小林工業所の「小」はお客様との距離が小さい(短い)、ファミリーのような親近感があること、「林」はウッドということからファミリーウッドにしたわけです。名刺や封筒、看板などに、このファミリーウッドを使うことで住宅事業をクローズアップさせ、マーケットに浸透させてきました。
10年ほど前に『DAIC2』を導入されたと聞いています。
小林:昔は決算をしてみなければ利益が出ているのかいないのかわからないような状態でした。このため前の税理士先生から松崎先生に切り替える際、タイムリーに現場ごとの業績をつかむためには『DAIC2』が最適と勧められ、導入しました。
実行予算はどのようにして作成されているのですか。
小林:当社では大別して2つの方法で行っています。1つはある“ソフト”を使って見積もり(請負金額)を出すと、自動的に実行予算が組まれるという方法です。このソフトは全国の工務店・ビルダーで組織・運営されている「団体」で作られたものです。当社もその会員企業で、スピーディーに見積もりを作成する狙いから活用しています。その中身は基礎工事、キッチン、トイレ、ユニットバスなど“アイテム”ごとに標準コストが定められていて、それに則って「対象顧客」の見積もりを作成するというものです。
それに対して、松崎先生の事務所のようにデザイン性が高く、標準的なケース(建物)とは異なる場合は基礎に使う鉄筋コンクリートの量から、すべてアイテムごとに拾い出して積算する必要があります。この場合は、従来の大工・工務店のやり方で、最初に実行予算を出して、そのうえで請負金額を決めます。つまり建物が標準的かそうでないかによって、“両者”を使い分けているということです。なぜ、そうしているのかといえば、従来の方法だと、見積もりを出すのに手間と費用がかかるからです。その手間と費用を省く手段として、そのソフトを使っているわけです。
松崎税理士:ただし、小林工業所さんの場合は、工期が比較的短いということもあり、『DAIC2』に実行予算は登録せず、材料の仕入先や外注先から請求書が送られてくると、そのつど金額を入力するという手法をとっています。
監査担当者:『DAIC2』では現場ごとに「工事番号」をつけていて、例えば仕入先が請求書を書くとき、必ずどこの現場でその材料が使われたのかを明記するようにしてもらっています。
小林:毎月20日締めの25日請求で、支払いは翌月5日です。先ほどそのソフトを使うと自動的に実行予算が組まれると言いましたが、それはその工事の粗利益(請負金額実行予算)はいくらなのかもわかるということであり、その“目標粗利益”と実際に工事を行った結果、粗利がどれくらい出たのかを『DAIC2』で1棟1棟チェックしているわけです。具体的には《工事利益管理表》という帳表を見てチェックしています。これは、複数の工事の粗利益率や入金状況などを一覧表にしたものですから、これを見ればどの工事が儲かっているのかいないのかを一目で確認できます。
1棟当たりの目標粗利益率は。
小林:具体的な数字は言えませんが、人件費などの固定費を賄い、かつ毎期黒字決算を実現していくためには、やはり数十%は必要ですね。
その目標粗利益率が実際より下回るときというのは……。
小林:端的にいえば“失敗工事”をしたときです。例えば、図面上は天井の高さを2.5メートルとしたが、実際にお客様がその天井を見たら「ちょっと低いな」と感じたとします。それは、お客様との打ち合わせのときに「もしかしたら見た目は低く感じるかもしれません」と説明しなかった我々の方に落ち度があると捉えています。結果、無償でやり直すこともあります。それは目標粗利益をその分引き下げることになりますが、地元に根を下ろして事業をやっていくためには、ケースによってそういうことも必要だと考えています。
松崎税理士:それは、目先のことより一生つきあっていくという姿勢の表れだと思います。実際、感じのいい対応を受けたお客様のなかには、自分の知り合いを小林工業所さんに紹介したり、自らリフォーム工事をお願いしたりしていますからね。
工事原価(変動費)の中では、やはり材料費と外注費が大きなウエートを占めているのではないかと思いますが、この面で何か工夫されていることはありますか。
小林:天然素材などの「主要木材」に関しては仕入先を一本に絞ることで単価を抑えています。他方で、壁などに使う材料や照明器具などに関しては、先ほど言った「団体」を通じて仕入れています。この方がいい物を安く調達することができます。
また、1軒の家を建てる場合、大工さん以外に「基礎工事」とか「屋根工事」「電気工事」など、10工種以上の職人さんが関わります。その人たちを現場で監理しているのが工務担当者です。大工さんも一人で行う方もいれば、3人1組で行う人たちもいますが、基本的には当社の家造りに共感してくれている人に仕事をお願いしています。
今後は「設計士」ごとに分けて、業績を管理していきたいと考えています。それは、つまり設計士ごとに来期はどれくらいの売上と経常利益をあげるかという目標を持たせ、その進捗管理を『DAIC2』で行っていくということです。
同業他社との競争は年々激しさを増していますが、社員一人ひとりが常にお客様の立場で物事を考え、きめ細かな対応を行っていけば、業績を伸ばしていくことは可能です。今期は年商6億円、来期は8億円の達成を目指しています。
(本誌・岩崎敏夫)
戦略経営者2007年9月号より
■ 会社概要
| 業種 | 木造建築工事業 |
|---|---|
| 設立 | 1953(昭和28)年7月 |
| 本社 | 長野県駒ヶ根市赤穂2375-1 |
| 売上高 | 5億円 |
| 社員数 | 17名 |
| 会計システム | 建設業用会計情報データベース(DAIC2) |
長野県に本社を置くパブリックレコードでは、バランス・スコアカード経営を導入して新商品の開発に力を入れる一方、TKCの『戦略販売・購買情報システム(SX2)』と『戦略財務情報システム(FX2)』を活用して経営体質の強化に取り組んでいる。そこで、その活用法を同社の奥田憲一社長(57)と、顧問税理士の松崎堅太朗氏、監査担当者の永井康浩氏に聞いた。
御社は日本で唯一アナログレコードのマスター盤を製造しているそうですね。
奥田:マスター盤というのは、アルミ製の円盤に特殊な塗料(ラッカー)をコーティングしたものです。このマスター盤に音入れ(カッティングしてミゾを切ること)をして、それをニッケル加工して金型を作り、その金型を使ってプレス機でアナログレコードを生産するわけです。したがって、マスター盤とはアナログレコードを生産するための「型材」ということです。レコードのもとになる重要なディスクなので、キズやホコリ、歪みのないフラットな状態が求められ、そこに塗布するラッカーも厚さ180~200ミクロンにします。現在、このマスター盤を製造しているのは世界で3社しかなく、国内では当社だけです。
アナログレコードは1982年にCD(コンパクトディスク)が登場して以来、影が薄くなる一方ですが、その市場規模は現在どれくらいなのですか。
奥田:国内のアナログレコード枚数は年間100万枚前後といわれています。クラブと呼ばれるナイトスポットでは、DJはCDよりもアナログ盤を好んで使います。アナログの方が低音域の響きがよく、ダンスには向いているからです。CDに比べ音が柔らかいのが特徴です。また、昨年は「マツケンサンバ」が流行りましたけれど、マニア向けにLP盤も発売されています。ただ、当社にとって重要なのは、アナログレコードが何枚生産販売されたかではなく、タイトル(新曲)がどれだけ出るかです。仮に1タイトルで100万枚売れても、うちの場合は2枚(A面・B面)だけですからね。取引先(発注先)はカッティングを行っているところで、主にヨーロッパを中心に出荷しています。
当社は75年に父(奥田実氏)が興した会社で、彼はキングレコードで録音盤の製作にかかわっていました。その技術を生かして、「あなただけのレコードを作ります」をキャッチフレーズに録音業からスタートしました。当初は録音盤を仕入れて、ダイレクトカッティング盤を作っていました。このダイレクトカッティング盤は、録音盤に直接カッティングしたレコードのことです。
その頃、国内でマスター盤を作っているところはなかったので、82年にマスター盤の製造に乗り出したのです。
現在の年商は。
奥田:約3億円(2004年9月期)です。その内訳は、(1)マスター盤の製造が約8000万円、(2)AV(オーディオ・ビジュアル)が約1億4000万円、(3)電子部品の組立が約8000万円、です。 マスター盤の売上は一時約2000万円にまで落ち込みましたが、ここにきて盛り返しています。それはパイ(需要)の拡大というより、当社の海外取扱店(イギリス・ドイツ等)がアグレッシブに営業活動を展開してくれたからだと思います。一方、(2)のAVは音と映像をベースにした事業、(3)の組立は商社経由でデジタルカメラ関係の部品を受託生産しているものです。
10年以上前に『SX2』を導入されたと聞いています。
松崎:『SX2』が提供されて間もない頃です。それから数年後に『FX2』も導入していただきました。現在では『SX2』に売上と仕入データを入力すれば、そのまま『FX2』に連動されるので、経理の効率化がはかられています。
奥田:当初は請求書が手書きに比べ綺麗になるなど、対外的な面が導入効果として大きかったが、最近では経営分析(業績改善)のツールとして活用しています。
それは部門別に分けて業績管理されているということですか。
奥田:そうですね。『FX2』では先ほどいいましたマスター盤、AV事業、組立部門の3つに分けて、部門貢献利益をタイムリーにつかんでいます。他方、『SX2』ではその内訳として、主にお客様ごとに部門を分けて業績を把握しています。例えば、AV事業であれば「上伊那郡音楽祭」「音楽教室」「小学校」「中学校」「高校」「大学」などに分けていて、それらの売上と粗利益を管理しているわけです。
永井:AV事業は季節的な変動が激しく、とくに4、5、6月が「魔の3ヵ月」といわれています。
奥田:その理由は、AV事業で大きなウエートを占めているのが学校関係だからです。このあたり(長野県上伊那郡)では毎年7月頃と10~12月に「音楽会」を開催します。音楽会は、ブラスバンド部による定期演奏会やクラス単位で歌をうたうものなど、いろいろあります。それが小・中・高校、長野県内と県外にあります。そのときの音と映像を収録して、CDあるいはDVDにして納品するわけです。
松崎:AV事業で、音楽会と並ぶ大きな柱が「卒業記念」です。
奥田:卒業記念というのは企画物なので、その内容は学校ごとに違います。このため先生や父兄、生徒とよく話し合い、何を収録するかというコンテンツを決めることが重要になります。例えば小学校の場合なら、1年生~6年生までの運動会や修学旅行の思い出を入れるとかですね。
料金は音楽会と卒業記念では違います。音楽会の場合は生徒数が30人でも50人でも一緒ですが、卒業記念の場合は企画物なので注文数によって異なります。また、1本当たりの粗利益率も卒業記念の方が高いです。
松崎:学校市場は比較的リピート率が高いことと、支払(父兄)も納品後ではなく、前受金としていただくケースがほとんどなので資金繰りが楽になるという利点があります。このため『SX2』の《部門別売上月報》を見ると、シーズン中は売掛金残高がマイナスになるところがいくつも出てきます。
奥田社長がよく見ている帳表というのは……
奥田:『FX2』では《部門別利益管理表》です。マスター盤、AV事業、電子部品の組立の部門貢献利益が当月いくらで、前年同期に比べて増えているのか減っているのかをチェックします。マスター盤とAV事業の変動費は材料費、消耗品くらいで、組立に関しては取引先から材料を支給されます。したがって、3部門ともコストとして大きいのは人件費なので、その金額が予算内に収まっているかどうかを毎月チェックしています。
次に『SX2』の《部門別売上月報》で、どの部門が前年に比べて伸びているのかなどを見ます。例えば主力の学校関係でいえば、今期は小・中・高合わせて100校から卒業記念の注文をいただくことを目標に掲げ、取り組みましたが、3月の途中段階で92~93校になっています。前期が約80校でしたから10校あまり伸びましたが、小・中・高校別に見ると、小学校が減っています。その一因はやはり少子化にあると捉えています。
今後はどんな戦略で事業を伸ばすことにしているのですか。
奥田:一言でいえば、“思い出のトータルメーカー”をキャッチフレーズに高付加価値戦略を展開していきます。具体的には「1校につき年間2タイトル(音楽会と卒業記念)の受注」を目標にしています。 そこで、この目標を達成するために、当社のコア・コンピタンスである“音・映像”技術を生かして「卒業記念DVD」などの商品を開発・販売しました。これはDVDが今後の主流になると考え、従来の卒業アルバルに代わる新しい卒業記念品として開発したものです。
松崎:実は、この「卒業記念DVD」というのは、バランス・スコアカード(BSC)を作成して、若手社員が自社の強み・弱みは何か、今後どういう商品を企画提案すれば、お客様のニーズに応えられるかなどを徹底的に話し合った結果、産み出された商品です。パブリックレコードさんの将来を担う戦略商品であり、すでに「中小企業経営革新支援法」の承認を得ています。
DVDに特化していくにあたっては、取材・編集能力を高めていかなければなりませんね。
奥田:それが一番の課題です。現在AV事業にかかわる正社員は13名です。録音は1人で行えるので、今の陣容なら1日当たり30件はこなせます。それに対し、DVDの場合は1つの卒業記念を制作するのに最低3名は必要で、1日フルにやっても3件くらいです。そこで昨年、AV部門に2名採用するとともに、映像に関する設備投資も行いました。 いずれにしろ、DVDを1つの切り口にして、お客様との関係を密接にしていけば、今後も成長路線を歩んでいくことができると考えています。当面の目標は、年商6億円の達成です。
(本誌・岩崎敏夫)
戦略経営者2005年5月号より
■ 会社概要
| 業種 | 情報記録物製造業 |
|---|---|
| 設立 | 1976(昭和51)年12月 |
| 本社 | 長野県上伊那郡宮田村6031-1 |
| 売上高 | 3億円 |
| 社員数 | 24名 |
| 会計システム | 戦略販売・購買情報システム(SX2) |
山と谷に囲まれた信州・木曽福島で30年以上に渡り漬物製造・販売を行ってきたアルプス物産は、今後の生き残りを目指して地元特産の素材を使った新商品の開発や新工場建設など様々な施策に取り組んでいる。そんな積極的な経営を志向する原貞夫社長(70)と原隆司専務(45)が経営上の意思決定を行ううえで最も信頼しているツールが、TKC『戦略財務情報システム(FX2)』だ。
漬物製造をメーンに事業展開されているそうですね。
原:山菜の醤油漬け、野沢菜漬け、赤かぶの酢漬けなどを卸売業者や小売店向けに製造販売しています。一方、惣菜メーカー向けには早わらび、山うど、たらの芽の水煮などの一次加工品を提供しています。
一部、コンシュマー向けの商品も扱っているとか。
原:ええ。お土産や贈答用の漬物を平成9年に国道361号沿いにオープンした「つけもの茶屋」というアンテナショップで、自社ブランドとして販売しています。
材料の仕入れはどのように行っているのですか。
原:昭和43年の会社設立当初はほとんどが地元からの調達でした。しかし、今は時代の流れで、山菜などは輸入品が主体になりました。これは、全国の漬物メーカーでも同じことが言えます。
現在の漬物業界の景況はいかがでしょう。
原:けっして良くはありません。市場の縮小傾向にともない、低価格競争がより一層激しくなっています。コストの安い中国で材料を調達する業者が増えていることから、この傾向は当分続くとみています。
利益を上げるために、どのような方策で取り組んでおられます。
原:一言でいえば、「経営革新」ですね。具体的には「高い利益率が期待できる付加価値のある新商品の開発」と「新工場建設による生産性の向上」をテーマに、中小企業経営革新支援法(革新法)の申請をしました。昨年11月に無事、長野県から承認が降りました。 とくに新商品に関していえば、地元のキジや山鳥など「肉類の漬物」の開発に取り組んでいます。木曽福島町には、鳥の民間養殖業者がかなりいますので材料の調達に困りませんし、地域の特色を打ち出すことができると考えたからです。今年あたりから、いよいよ試作の段階に入っていきたいと思います。
新商品の具体的な販売方法は?
原:地元の特産品としてインターネットで通信販売することを考えています。全国各地の多くの人々に見てもらえるというインターネットの最大の利点を活用しない手はありません。このため、近いうちに自社のホームページを開設し、特に首都圏のユーザーに対して積極的にアピールしていきたいと思っています。
野沢菜も信州の特産品ですが、現在はどこのスーパーでも手に入る商材になっていますね。
原:私としてはそうしたどこにでもあるものではなく、山に囲まれた木曽福島町ならではの「特異な素材」を扱うことで、オリジナリティーを出していきたい。血糖値を抑える効果のあるイヌリンという成分を豊富に含んだ菊芋なども、いずれは商品化する計画です。
一方の新工場の建設について、お聞かせください。
原:それは、現在の本社工場と藪原工場を新たに建設する「新工場」(敷地面積3000坪)に統合するということです。これによって、生産性の向上と衛生管理の強化をはかることが狙いです。遅くとも来年度中には完成する見通しです。建設費用に関しては、革新法の承認を受けたことで、政府系金融機関から低利子の融資が得られそうなので、それを充てることにしています。
衛生管理の強化というのは。
原:ここ数年、食品メーカーが相次いで不祥事を起こしており、安全性や安心感に対する消費者のニーズが高まっています。実際、我々の取引先からも、安全性のより一層の強化を求める声が出ています。
具体的には、どのようにして安全性の強化をはかるのですか。
原:HACCP(ハセップ)の考え方を参考に、「エアシャワー」の設置や、原材料の入庫から出荷までの流れをすべてワンウェイ(一方通行)にすることで、工場内に雑菌の浸入などを未然に防ぐようにします。同時に、従業員の意識改革を行うことで安全性の確立を実現したいと思っています。
10年前に『FX2』を導入されたそうですが…。
原:はい。顧問税理士の湯澤文弘先生の勧めで導入しました。経営における意思決定や業績管理を行ううえで、非常に有効なツールですね。最近では、後継者の原隆司専務に業績管理や経営判断を徐々に任せるようにしています。
原専務は、『FX2』のどの機能を主に活用していますか。
原専務:《変動損益計算書》と《利益管理表》をよく見ていますね。売上、限界利益、経常利益などの数字に注意しながら、常に最新の業績をつかんでいます。とくに前年と比べてどうなのかが、すぐに確認できる点がとてもありがたい。というのも、私どもでは季節の野菜や山菜を原材料として扱っているからです。天候の不順などで、材料費が高騰する気配を感じたときは、いち早くまとめ買いをするなどして、仕入単価を下げるように努めています。
それ以外では?
原専務:《日々の売上推移表(予算比較)》です。これは日々の売上推移がわかるだけでなく、前年同日との比較もできます。したがって、異常値や問題点があれば、ドリルダウン機能で、前年の実績推移との対比グラフを見て検証します。また、経費についても《変動損益計算書》で異常値が見つかれば、ドリルダウンで会計伝票までさかのぼり、原因究明にあたります。 他方、《部門別利益管理表》を活用して部門ごとの売上、限界利益などをチェックしています。具体的には、・本社工場、・薮原工場、・営業課、・アンテナショップ「つけもの茶屋」の4つの部門に分け、タイムリーに業績を把握しています。
入力はどのように?
原専務:当社では、『SX2(戦略販売・購買情報システム)』に担当者が入力した仕入、売上データや入金、支払データを毎日夕方、フロッピーディスクを介して『FX2』に移し入れてます。以前は別の販管ソフトを使っていましたが、入力作業が二度手間になり不効率でした。そこで、湯澤会計事務所の松崎堅太朗税理士の勧めもあって、昨年『SX2』を導入したわけです。同時に、社内の複数のパソコンをピアツーピア接続して、『FX2』の分散入力が行えるLAN環境にしてもらいました。
革新法の申請時に提出する経営計画の策定は、『FX2』のデータをもとに『継続MAS』で行ったと聞いています。
原専務:ええ。売上目標などの数字を松崎税理士に伝えたうえで、『継続MAS』を使って3ヵ年の経営計画書を作成していただきました。
松崎税理士:アルプス物産さんの『FX2』のデータを伝送処理で事務所内の『継続MAS』に落とし込み、「経営革新計画システム」の機能を用いて計画数値を策定していきました。『継続MAS』では、それら計画数値を基礎に、「経営革新計画の申請書ファイル」としてエクセルに切り出すことができます。このファイルを使用すれば、中小企業庁のホームページに掲載している様式と同じなので、申請書をエクセル上に展開することができます。
申請書をエクセルファイルにできるということは、電子メールを使ってアルプス物産さんと湯澤会計さんとの間で、申請書のこまかいやり取りができますね。
原専務:おっしゃる通りです。電子メールで何度かやり取りしながら、微調整を行いつつ完成させていきました。ちなみに提出先の窓口となった長野県の木曽地方事務所にも、申請書のフォームを長野県の形に修正したうえで、エクセルファイルのまま電子メールで送りました。
最後に今後の取り組みについてお話ししていただけますか。
原:新工場が完成して一段落した後に、工場内に「漬物体験コーナー」を設け、地元のご家族や観光客を招きたい。どこのご家庭も、父親としての存在感を示すことができる「場」が、少なくなってきています。そんななかで、家族全員で漬物づくりを体験することで、父親を中心に一家がまとまるという空間があってもいいのではないかと思います。
原専務:それと社員の意識改革ですね。とくにコストに対する意識を徹底させることで高収益体質に改めていくことを考えています。それが結局、強い会社を作る一番の近道だと思います。
(本誌・吉田茂司)
戦略経営者2003年5月号より
■ 会社概要
■ 当時の監査担当者
| 業種 | 漬物製造・販売 |
|---|---|
| 本社 | 長野県木曽郡木曽福島町新開2386‐1 |
| 売上高 | 2億2000万円 |
| 社員数 | 25名 |
| 会計システム | 戦略財務情報システム(FX2) |
湯澤文弘税理士事務所 監査担当 福島由希夫
アルプス物産さんと当事務所では30年以上のお付合いになります。
『FX2』は平成5年から導入していましたが、販売管理については昨年まで他社ソフトを利用していました。取引先も多く、取引件数も小口から大口まで多岐にわたるため入力の負担が大きく、売掛金も月末一括計上でした。そのため、社長の頭の中では会社の業績がおおよそ見当がついていても、実際に『FX2』への販売関係の仕訳入力が完了し、具体的な数値として把握できるのは1~2ヵ月後になってしまうという状況でした。そこで、『FX2』を有効に活用し、タイムリーな業績確認ができるように、『SX2』の導入を提案しました。
『SX2』の導入当初は、取引先、商品情報の登録等、準備が煩雑で、経理の方々に慣れていただくまでには時間を要しましたが導入後半年程でスムーズに機能するようになりました。
『SX2』で入力した売上、仕入関連の仕訳データは全て即日連動読込され、『FX2』に即座に反映されるので、現在では、売上高をはじめ限界利益率や経常利益の数字をパソコン画面ですぐに確認できます。
また、『FX2』からは、いつでもその時点の試算表を出力できます。その試算表を使えば経営者または入力担当者だけではなく工場の従業員にも、最新の会社の経営状態を具体的な数字として知ってもらうことが容易にできます。
現在、アルプス物産さんは、新工場の建設に備え、社長、専務を中心に新たな販売市場の開拓、経営の方針見直し等、転換を図っているところでとても活気があります。当事務所としても、少しでも同社の発展に貢献できるよう、今まで以上に努めていく所存です